居酒屋専門・客単価UPコンサルタント/税理士 林 良江です。
現状では、コロナの陽性者が増えるたび
飲食店さんは、フツウの営業ができなくなります。
「もう勘弁して!」
と、悲痛な心の声が聞こえてきそうです。
ただ、いくつかの荒波を乗り越えてきた、飲食店さんは
波にあらがうのではなく
波の乗り方・流され方を学んだように感じています。
例えば
コロナをきっかけに
人との接触回数や接触時間を減らす工夫をしたり
人手不足をITの活用で補ったり
と、今までの思考回路には無かった考え方を
飲食店経営に取り入れようとされています。
その代表例が
キャッシュレス決済の普及でしょう。
よく飲食店を利用する、知人曰く
キャッシュレス決済が使えない飲食店は利用しない。
とまで言わしめています。
ですから、キャッシュレス決済を導入済みの飲食店さんは
あらゆるメディアに
「当店ではキャッシュレス決済がご利用できます。」
と、アピールしておきましょう。
知らない間に、売上を逃しているかもしれません。
当たり前と思っている情報も、消費者に伝えてください。
一方、キャッシュレス決済が未導入の飲食店さんからは
「キャッシュレス決済を導入しようと思っているけど、どうしたらいいの?」
という相談が増えてきました。
- やっぱり気になる手数料。でも、手数料がさまざまで、どれが妥当かどうかがわからない。
- 色々調べてみるけど複雑で、何が自分のお店に適しているのかかわからない。
- 用語が多くてわかりにくい。
ってな感じですね。
この記事を読んでいただければ
あなたのお店に最適な業者を選ぶ基準が明確になります。
また、導入後の日常処理について、質問の多い項目の解説を入れておきます。
あなたのお店の状況に合わせ、必要な項目を参考にしてください。
では、《導入編》から見ていきましょう。
目次
導入編
キャッシュレス決済の経緯と現状
飲食店でキャッシュレス決済の取扱いを声高に叫ばれるようになったきっかけは
2019年10月から2020年6月まで実施された、キャッシュレスポイント還元事業です。
この事業は、元々キャッシュレスの利用比率が諸外国と比較して低い日本において
キャッシュレスという文化を根付かせようとするものでした。
根付かせたい理由の一つは、2020年に予定されていたオリパラです。
外国人観光客は、キャッシュレス決済を利用する比率が高いのに
日本ではキャッシュレス決済がほとんど使えない。
これでは、観光客に買い物をしてもらえない。
経済的な効果が下がってしまう!という危機感から
お店側にキャッシュレス決済に慣れてもらうための施策でした。
そして、2021年現在、オリパラというよりは
コロナ対策でキャッシュレス決済のニーズが高まっています。
ここからは、キャッシュレス決済の現状について触れていきます。
キャッシュレス決済は、大きく2つに区分されています。
QRコード決済グループと
それ以外(クレジットカード、デビットカード、電子マネー)のグループです。
- QRコード決済(〇〇ペイ)は,以前は扱う決済会社ごとにQRコードを取得しなければいけませんでしたが
今では統一規格があるので、これひとつで複数の決済サービスを扱うことができるようになりました。 - QRコード決済以外は、決済代行会社と契約することで多種の決済に対応できるようになりました。
会社によって、扱うカードの種類に違いがありますので、要確認です。
キャッシュレス決済を導入するメリット
キャッシュレス決済を導入するデメリット
- 決済手数料がかかる
- 設備投資にお金がかかる
- 入金が後日になる
どのくらいのお金がかかるのか
- 決済端末の購入代金
上記デメリットのところでも触れましたが
まず最初に必要になるのが、決済端末の購入代金です。これが無いと、決済に必要な情報の読み取りができません。
ただ、決済端末もピンからキリまであります。違いが判らなければ
一番安いもので『とりあえず始めてみる』というのも一つの考え方です。 - 決済手数料
次に必要になるのが、売上の都度発生する、決済手数料です。これも、売上の3%~10%と言われており、幅があります。
また、売上高によって変動する場合もあります。
極力低い手数料で済ませられるところを選んでください。 - 入金時の振込手数料
売上入金時の振込手数料にも気を付けなければいけません。一律、振込手数料はかかりません。
一定の銀行なら振込手数料がかからない。
一回につき〇〇〇円振込手数料がかかります。など、色んなパターンがあります。
以上が必須の支出です。
他に、月額固定費が必要な場合もあります。
他に気を付ける点
- 特に気を付けなければいけないのが、入金までの日数です。
売上の締日が15日と月末で、締日からの10日後に振込まれるとしたら
16日の売上代金は、25日後の翌月10日まで入金されません。一方で、最短翌日に入金されるものもあります。
25日か1日か。
比べるまでもありません。極力、こまめに入金されて、振込手数料が安いところを選ぶようにしていきましょう。
- キャッシュレス決済のデータを会計ソフトと連携できるか
正直、キャッシュレス決済の導入だけで、いっぱいいっぱいかもしれませんね。ですから、会計ソフトとの連携は今すぐにとは言いません。
しかし、今期の決算が終了した時点で検討すべき項目です。
会計ソフト(freeeなどのクラウド会計)と連携できるものを使っていきましょう。
まとめ
最近では、キャッシュレスが使えることが、お店選びの条件に入りました。
もう、待ったなしの状態です。
気になる事業者のパンフレットをいくつか取り寄せ
費用の3項目と他の2項目を中心に比較検討のうえで決めていきましょう。
迷ったら、ご相談ください。
日常編
飲食店で、キャッシュレス決済を導入すると
日常的に今までにない経理処理をすることになります。
以下の場面ごとに、注意すべきポイントをお伝えします。
参考にしてください。
- 領収書を作成した場合の印紙の取扱い
- 売上時の仕訳
キャッシュレスポイントを利用された時の仕訳(2020年6月30日で終了)- 代金入金時の仕訳
印紙の取扱い
《キャッシュレス決済の種類》
キャッシュレスは、大きく二つに分けられます。
- クレジットカードに代表される、消費者が買い物をした後でお金を準備するもの
- 即時決済型のデビットカードや事前にチャージが必要な電子マネーのような
消費者が買い物をする前にお金を準備してるもの
《1.後払のキャッシュレス》
買い物をした後でお金を準備するクレジットカードやクレジットカード決済型のデビットカード等のご利用があった場合は
領収書に「クレジット払い」である旨を明記しておけば印紙は不要です。
《2.前払のキャッシュレス》
買い物をする前にお金の準備がしてある電子マネーや(※)即時決済型のデビットカードによる支払を受けた場合は
現金取引と変わりません。
記載金額が5万円以上なら、印紙が必要になります。
(※)即時決済型のデビットカード取引の「口座引落確認書」は
領収書ではないと判断され、印紙は不要です。
通常のレシート(販売代金の受領事実を証明するもの)には、印紙が必要です。
《3.どっちつかずのQRコード決済》
厄介なのが、QRコード決済です。
実は、QRコード決済の取扱いを明記するものはありません。
ですから、取引の実態から判断するしかありません。
QRコードの実態とは
代金を受け取る側にしてみれば、キャッシュレス決済に変わりがないのですが
その決済方法はお客さんが選択できます。
QRコード決済で大きな買い物をすることは、少ない気がしますが
5万円を超える決済が実行される場合は、お客さんに伺って
- チャージしているお金から支払う→記載金額が5万円以上なら、印紙が必要
- クレジットカード決済→印紙は不要
と処理するしかないです。
キャッシュレスで売上が決済された時の仕訳
<売上時> 記載金額は任意です
飲食店の場合、売上伝票ごとに仕訳をするわけではありません。
一日分をまとめて処理しますので
現実的には、こんな感じの仕訳になるでしょう。
その日の売上合計
イートイン 1,500円(10%)
テイクアウト 500円(8%)
入金内訳
現金 1,200円
キャッシュレス 800円
現金 1,500円/売上 1,500円(10%)
現金 500円/売上 500円(8%)
売掛金 800円/現金 800円
キャッシュレスポイントを利用された時の仕訳
売上時にポイント(50円)が利用されたときは、次の仕訳が追加になります。
売上値引 40円/売掛金 40円(10%)
売上値引 10円/売掛金 10円(8%)
※使われたポイント50円を10%の売上から引くか8%の売上から引くかは任意です。
ですから、全てを10%売上から引いても、問題ありません。
今回は、最も合理的と思われる売上金額の比率で按分しています。
解説:「売上」をマイナスしても結果は同じですが、その場合は、レシートにマイナス金額の内訳(8%がいくら10%がいくら)記載義務が生じます。
内訳記載ができる環境が整っていれば(レジの整備等)、「売上」のマイナス処理でもOKです。
キャッシュレス代金の入金時の仕訳
<回収時>
預金 776円/売掛金 776円
手数料 24円/売掛金 24円
この「手数料」は金利相当として扱われますので
消費税の課税区分では非課税仕入になります。
ご注意ください。
又、使用する勘定科目は、任意です。
手数料を雑費に含めても問題ありません。
ただ、上記にも書いたように
消費税の課税区分で非課税仕入になるので
ミス防止の観点から、「手数料」として分けることをお勧めします。
飲食店の場合
年商が1千万円未満で消費税の免税事業者に該当する確率は
他の業種と比べて低いです。
ですから、消費税の課税・非課税は、仕訳の段階で区分しておきましょう。
最後に
キャッシュレスが判らない、運営に不安がある方は
林会計事務所にご相談ください。
あなたに快適な居酒屋経営をお届けします。
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