居酒屋専門・客単価UPコンサルタント/税理士 林 良江です。
今日は、帳簿類の保管についてお伝えします。
誤解のないように、最初に申し上げます。
帳簿類の保管は、今でも
紙保管が大原則です。
一方で、社会情勢の変化を鑑み、電子データでの保管も
例外ながら認められきました。
令和3年9月に発足したデジタル庁に象徴されるように
社会全体のデジタル化は抗うことができない時代となりました。
こうした波に乗るように
令和4年1月から電子帳簿保存法が変わりました。
とはいえ、中小規模事業者にとって「電子帳簿」なんてものは
程遠い世界の代物であって
自分には関係ないと思ってる人は多いのでは?
実は、私もその一人です。
正直、全くの準備不足なので、1月からの対応は出来ずじまいでした。
幸い、宥恕規定が出たので、1月から対応しなくても罰則はありませんが
少しずつ対応していこうと思っています。
目次
電子帳簿保存法が変わった理由
ネット環境が整い、企業を取り巻く商慣習も大きく変わりました。
その結果として
- 電子取引が多くなったから
- 書類は、かさばるから
- ペーパーレス化が進んでいるから
- キャッシュレス化が進んでいるから
などの理由で
電子での帳簿保存のルールを整備したのが
今回の改正「電子帳簿保存法」な訳ですが
実のところ税務署は
税務調査の時の書類検索にかかる時間を減らしたいのが本音です。
実際、税務調査に立ち合うと
調査官は納税者と話す時間より
書類を見て(探して)いる時間の方が圧倒的に多いです。
これが、電子データになっていれば
検索をすれば、すぐに欲しい情報を
手に入れることができるようになります。
ですから今後、電子帳簿による保存が普及すると
税務調査のやり方が大きく変わっていくことでしょう。
つまり、今回の改正の影響は
そういう意味でも、大きいと認識してください。
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法の中身は、次の3つです。
- 電子帳簿等保存
- スキャナ保存
- 電子取引に係るデータ保存
で、これらの保存を対象書類から区分してみると、以下のようになります。
税金の世界には「帳簿」と「書類」がある
「帳簿」
仕訳伝票や現金出納帳、売掛帳、仕訳日記帳など、決算資料を作るための資料(A)
「書類」は、大きく二つに分かれており
- 棚卸表や貸借対照表、損益計算書といった、いわゆる決算書(B)
- 注文書(発注書)や納品書、請求書など、外部との取引書類(C)
このうち自社の決算のために
自社のパソコンで作成するもの【(A)と(B)】が電子帳簿等で
「1.電子帳簿等保存」の対象です。
一方、外部との取引の記録である(C)については
<発行側>
自社のパソコンで作成・発行する書類の控は「1.電子帳簿等保存」
<受取側>
電子データの活用用途が格段に広がったことから
旧来は紙の書類保存の規定だけで足りていたのですが
『電子データ』に載っている書類保存も
規定することになりました。
- 紙で受け取った書類の保存法は「2.スキャナ保存」
- 電子データで受け取った書類の保存法は「3.電子取引に係るデータ保存」
電子データは電子データで保存することが義務付けられ
紙に打ち出して保存することは認められなくなりました。
(注)経理処理をするにあたり、紙に打ち出すこと自体は、問題ありません。
ただ、その打ち出した紙を取っておいても『保存』にはなりません。
(令和5年12月31日までの宥恕規定あり)
⇑
ここが中小規模事業者にとっては、一番の問題です。
まとめるとこんな感じ
そもそも、電子データとは?
具体的には
- 電子メールに添付された書類(注文書、契約書、送り状、領収書、請求書、見積書など)
- 発行者のウェブサイトでダウンロードする領収書等
- 第三者が管理するクラウドサービスを利用して授受する領収書等
- クレジットカード等の利用明細
- スマホアプリ経由の領収書等(スクリーンショットによる領収書の画像データも可)
といったところです。
電子データの保存法
実は、電子データにはその内容の信ぴょう性を保持するために
「タイムスタンプ」というものを付けることになっています。
相手が大企業の場合でしたら
タイムスタンプ付きの電子データを送ってくるので
受取った側としては
一定のルールに基づいて(後述します)保存すれば問題ありません。
しかし、タイムスタンプの付与にはお金がかかります。
よって、相手が中小企業の場合は
タイムスタンプが付いていない場合も想定されます。
そんな時は、受け取った側で
「電子データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規定」を
備え付けることで【代用】できることになっています。
法人・個人別の事務処理規定のサンプルを貼っておきます。
自社の状況に合わせて作成し、備え付けてください。
(注)タイムスタイプとは
ある時刻にその電子データが存在していたことと
それ以降改ざんされていないことを証明する技術です。
一定のルールとは
STEP1
受け取ったファイルには、次のどちらかの名前を付ける。
その1
以下の3項目
-
- 取引年月日
- 取引金額
- 取引先
サンプル 20220101_200,000_××㈱
その2
①、②、・・・と通し番号を付し
エクセル等で、ファイルの索引簿を作成する。
STEP2
3項目を付けたファイルは
電子データ保存用のフォルダに保存する。
保存先はハードディスク、CD、DVD等
特に制限はありません。
ここまでが、改正「電子帳簿保存法」の解説です。
大原則の、紙保管について
ここからは、従前どおりの紙保管についておさらいです。
紙保管の話になると、気になるのが保管期間です。
先にも触れたように、税金の世界には「帳簿」と「書類」があり
それぞれに保管期間が決まっています。
しかし、通常書類は事業年度ごとに分けられていると思うので
保管期間が過ぎて破棄するとしたら、事業年度ごとになります。
よって、難しい書類の区別などは考慮せず
各書類の一番保管期間が長いものをお知らせします。
法人の場合 10年
個人の場合 7年
法人に関しては、欠損金の繰越期間が9年に延長されました。
9年分帳簿書類が保存されていないと、欠損金の繰越控除ができません。
ですから、法人の場合は、7年ではなく9年です。
ただし、会社法の規定まで考慮すると10年になります。
最後に
飲食店の悩みのタネと言えば
- ジャーナル(レジのロール紙に打ち出したもの)
- 会計(オーダー)伝票
の保管でしょう。
多くの飲食店さんが、その保管場所には苦労しています。
中には「捨ててもいいですか?」
と、質問される方もいらっしゃいますが
信頼できる電子記録がない限りには
安易に捨てると、税務調査の時に厄介なことになります。
これらは、飲食店の売上の証拠書類の「帳簿」ですので
最低でも7年間は、破棄できません。
どうしても、保管場所に苦慮するようでしたら
POSレジなどのツールを利用して
これらの帳簿を、電子データで保存することを考えてください。
紙類の保管を考えると、POSレジの功績は大きいです。
この際ですから、POSレジを導入をお考えになっては如何でしょうか。
弊所では、POSレジと会計ソフトの連動サポートをしております。
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